国内でよく見かける「厚塗り」メイキングでのモヤり【絵描きの苦悩】

モヤモヤが解決できたので書き記しておきます。

「厚塗り」の定義も個人差が大きいので、あくまで私という人間の感性にもとづいた見方であることをご理解いただけるとありがたいです。

この記事は他人の創作スタンスを貶めたり批判する意図はありません。
自分が得た気づきを分析してこれからの創作活動に生かしていくという目的で書いています。


結論を先に述べると、国内の「厚塗り」メイキングは「厚塗りそのもの」へのハードルを下げてくれるものほど人気が高いってことです。

手順がややこしくなくて従来の線画ありきの塗り方から進化したやつがいいみたいですね。

以下、私がここ数年の間で積み重ねたモヤりを吐き出します。



SNSとかYouTubeでよく「厚塗り」イラストのメイキングとかあるじゃないですか。

日本人の作った厚塗りメイキングの動画って再生数が多くて、人気であればあるほど(私から見て)「薄塗り」イラストばかりなのはどういうことなんだろうと、けっこう前から疑問に思っていました。

そこで、YouTubeに上がっている厚塗りのメイキング動画を検索して、再生数の高い順からずらっとサムネを眺めてみたわけです。

不思議なことに、動画だと大体一万再生以下のもののほうが私が考えているような「厚塗り」に近いです。

上位に表示される動画は言い方がすこし不適切かもしれませんが、個人的にはほとんどが「薄塗り」の範囲内だと思います。
「線画なし」と明記されているものもありましたが、仕上がりを見るとはっきり線画が見えています。
ツッコミ待ちなのかと疑ってしまう。

まあ、そういうならお前の思う厚塗りとやらを見せてみろよという話なので、過去絵と共に「わたしのかんがえる、あつぬりはこうだよ♪」という例を示そうかなと。



私が思う厚塗りはこういうの↓

厚塗りのメイキングを作るときにこのイラストを使いました。

服も髪の毛もアウトラインがありません。

これも同じく、髪の毛も服もアウトラインがない。

上に同じ。


私が考える「厚塗り」ってこのあたりがスタンダードなんです。

アウトラインはできる限り薄くするか、完全になじませるかのどちらか。
とくに「顔回り」の立体感があるかないかでだいぶ判定基準が明確に分かれます。
油絵タッチに近ければ近いほど「厚塗りイラスト」だと、昔から考えていたところはあります。



国内で人気の「厚塗りイラスト」の基準はおそらくこのライン↓

線画などのアウトラインはわりとはっきり見える、塗りムラは残す、みたいなのがわりと国内基準の「厚塗り」なのだと思います。
個人的にはこれ、完全に「薄塗り」のつもりで描きました。

国内の「厚塗り基準」と自分の「厚塗り基準」にはだいぶ差がありますね。

と、ここまでつらつらと自論を述べてきましたが、10~15年くらい前は私が最初に挙げた厚塗り基準のイラストがいわゆる「厚塗り」としてみなされていたんですよ。

だんだん薄塗りと厚塗りの境目がなくなってきたのは、ここ最近のことだと思います。
時代の流れってやつですね。
それでも私は自分の中の厚塗り基準は変えられないし、変える気はありません。



結局のところ、厚塗りのイラストってそれまでアニメ塗りとかに代表されるような「線画ありきの絵」をずっとやってきた人にとっては、わりとハードルが高いんですよね。私も20代前半くらいのときはそうでした。

主線がない絵に本気で移行したい人は、この言い方もたいへん語弊があるかもしれませんが、国内よりも海外の絵師の動画の方が参考になる部分がたくさんあると思います。
動画の数も桁違いですし、見るだけでもたのしい。

もちろん、最初は自分にとってわかりやすいものから手を付けていくのがいいでしょう。

私は、線画ありの薄塗り→線画ありの厚塗り→線画なしの厚塗り、といったパターンで進化させていきました。

時間はかかったけど、得られるものは大きい。これホント。



手っ取り早く「厚塗り」感を出したかったら顔回りを立体的に描くのははずせないです。
鼻の穴を描くかどうかでもだいぶ重厚感が変わります。

「厚塗り」メイキングは「厚塗りそのもの」へのハードルを下げてくれるものほど人気が高いということは、「なんだか難しそう」という入口でつまづく人が多いってことでしょうね。
だから「薄塗りイラスト」に塗りムラをひとさじ加えたようなメイキングが好まれる。


普段の自分の描き方からちょっとアレンジを加えたら「厚塗り」になるんだよ、という内容だったら初心者にもやさしくていいかもしれない。

そういう心理は超わかる。
私なんか自己流で厚塗りイラストを練習してて軽く100回はつまづいたもんね~(満身創痍)。

傷口でくだらないマウントをとるのはこのへんにして、なにはともあれ、国内で出まわっている「厚塗り」に関するメイキングで「とくに人気が高いもの」へのモヤモヤが解消されました。心が快晴になったよ。

ちなみに海外絵師の厚塗りイラストの動画で人気の高いものは、初心者に「できそう」と思わせておいて実際にやってみたら激烈に難しかった…というパターンが多めなのであんまりへこまないようにしようね。






ここまでお読みいただき、ありがとうございました。











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