私の経験をもとにした自論です。
「絵を描くことをしばらく休んだら画力は衰えるのか?」
という疑問を感じたことはありますか?
絵を描く人間ならいちどは考えたことがあるのではないかと思います。
これまで私は37年間生きてきて、独学でときおりつまづきながらも、それなりに、自分なりに絵を描きつづけてきました。
二十代のころに派遣でOLをやっていたのですが、その時に三か月ほど絵を描かない時期がありました。
理由は仕事が多忙だった、とかではなく、ただただ「描きたいという気持ちが湧かなかった」というものです。
そんな中、ある日ひさしぶりにお絵かきを再開してみたら、特に何事もなく、いつもどおりに描けたのです。
そのかわりに、(当たり前ですが)急に上手くなっているということもありませんでした。
ゲームでいうなら、前回セーブしたところからまた始まったのだなといった感じでしょうか。
お絵かきって、休んだからといって画力が急激に低下(あるいは退化)するということはほとんどないと感じています。
もちろん、こういう体験には個人差があります。
人によっては「ちょっと休んだら画力が下がっていた、ショック」と、とらえる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、ちょっとまってください。
それは本当に画力が下がったのでしょうか?
ただ単に「お絵かきのカン」を取りもどすのに、ほんのすこしだけ時間がかかっているだけではないのでしょうか。
あるいは自分自身に、「休んでいたことを責める気持ち」から、余計なプレッシャーをかけていたりしませんか。
もし、思いあたることがあるなら、いますぐその「思い込み」をやめましょう。
「休む前より絵を上手く描けなければ、自分をゆるしてはいけない」という「思い込み」を。
話は逸れますが、私は絵を描くことは水泳と似ているなと思っています。
つまり、一度泳ぎ方をおぼえてしまえば、あとはブランクがあっても身体をうごかしていくうちにどうにかなじんでいく、ということです。
それを証明してみせたのが私の父でした。
数年前の話です。
私の父は定年退職後にとつぜん、木彫りの仏像をつくるために仏像の三面図を描きはじめました。
若いころは絵の勉強をしていたことを知っていたので、基礎画力には何の疑問ももたなかったのですが、さすがに数十年以上のブランクがあるから出来あがりはどうなるやら、と思っていたのです(超上から目線ですね)。
しばらく経ってから完成した仏像の絵を見て、私のムダに立派な自尊心はこなごなにくだけちりました。
絵を描かない期間がどれだけ長くても、それまでにつちかった技術はきちんと残っていたのです。
ブランクによる画力の低下に関しては、あまり心配しすぎないことが大事だなと思いましたね。
それよりも、「これがどうしても、なにがなんでも描きたい!」という気持ちがある限り、ヒトは何歳からでも成長することができるのだと、父の姿勢からまなびました。
だから今、絵を描くことを再開するのにためらっている方へ「もっと肩のちからをぬいてみませんか」と言いたいのです。
自分が絵に費やした年月や努力はそうカンタンには消えたりしません。
それらはいつでもそこにいて、あなたを待っているのです。
思うままにペンを走らせてみたら、新しいアイディアやたのしみが見つかるかもしれませんよ。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。